支援事例

大学におけるWebリニューアルとマーケティング体制構築支援

近年、大学を取り巻く環境は大きく変化しています。少子化による入学者の減少、大学間競争の激化に加え、文部科学省による運営費交付金の減少方針を受けて、大学自らが研究資金や外部連携費を確保する「自立経営型」への転換が求められるようになっています。とりわけ、民間企業との共同研究や受託研究を通じた資金獲得は、国立大学にとって喫緊の課題です。

こうした背景のもと、弊社はある国立大学に対して、ホームページの全面的なリニューアルと、それを軸としたウェブマーケティング体制の構築支援を実施しました。本支援では、単なる情報発信ではなく、共同研究につながる問合せ数の最大化を最終ゴールとし、以下の4つの柱に沿って実行しました。

支援の目的と背景

支援前、この大学のホームページは基本的な情報は掲載されていたものの、目的別に最適化された導線設計がなされておらず、ユーザーの利便性や情報到達率が課題となっていました。また、研究成果や地域連携の取り組みといった「独自性」が伝わりにくい構造となっており、大学の強みを十分に訴求できていない状態でした。

さらに、マーケティング視点からの改善施策が継続的に行われておらず、アクセス分析やデータに基づく施策の仮説検証も十分ではありませんでした。広報部門における人的リソースやノウハウの不足もあり、体制構築そのものが課題でした。

こうした課題を解決するため、以下の4つの施策を柱に支援を実施しました。


実施施策

1. 独自コンテンツの拡充とサイト構成の最適化

ユーザーにとって「情報価値の高いコンテンツ」を増やすことで、滞在時間や再訪率を高め、同時にSEO対策にも貢献することを目的に、独自コンテンツを大幅に拡充しました。

特に力を入れたのが「教員・研究者インタビュー」の充実です。大学の知的資産とも言える研究活動や地域連携事例を、学生や企業、地域住民にわかりやすく紹介することにより、大学の魅力と独自性を伝えるコンテンツ群を整備しました。インタビューは、研究背景・社会的意義・今後の展望までを包括的に整理し、読み物としても価値の高いものになるよう構成。また、特集ページを横断的に連携させることで、回遊性の向上にもつなげました。

このコンテンツ戦略により、「大学名+研究テーマ」や「教員名」での検索流入が増加し、リファレンス流入経路におけるアクセス数の大幅な改善が見られました。


2. メルマガの定期配信と広報基盤の整備

ホームページでの発信に加え、ターゲット層に向けた「プッシュ型」の情報提供手段として、メールマガジンの定期配信体制を構築しました。

配信対象は主に以下の通りです:

  • 地域の企業や自治体担当者

  • 地元メディア関係者

  • 地元企業関係者

メルマガでは、研究成果の速報、イベント情報、学生の活躍紹介など、大学が発信すべきトピックをタイムリーに届けることで、学外との関係構築と維持につなげました。また、各コンテンツにはWebサイトへのリンクを設け、自然な流入導線も設計。メール配信ツールにはABテスト機能や開封率分析機能があるものを採用し、反応の良い見出しやフォーマットの分析も行いました。

この取り組みにより、メール経由でのWeb流入が大幅に増加。イベント申し込みや資料請求といったコンバージョンにも大きく貢献しました。


3. ヒートマップツールを活用したUI/UXの改善

ユーザーがサイト内でどのようにページをスクロールし、どのエリアをクリックしているかを可視化するため、ヒートマップツールを導入。これにより、サイト内のユーザー行動を定量的に把握し、ページ構成やコンテンツ配置の改善に活かしました。

たとえば、トップページでは想定していた導線とは異なる箇所に注目が集まっていたことが判明。これにより、注目エリアの文言やボタン配置を見直し、CTA(Call To Action)の配置転換を実施したところ、資料請求や問い合わせへの遷移率が大幅に改善されました。

また、特集ページやインタビュー記事の読み進め率も分析し、スクロールされにくいコンテンツの文字量調整やレイアウト変更を行うことで、平均滞在時間が明確に向上しました。


4. 担当者による“仕組み化”と内製体制の構築

外部からの支援だけでは継続的な成果を出すことは困難です。そこで、広報・Web担当者が自律的に改善と運用を進められる体制づくりにも重点を置きました。

まず、定例のマーケティング勉強会やワークショップを開催し、「アクセス分析の読み方」「CV導線の最適化」「KPI設定と検証方法」など、現場で必要となるノウハウを体系的に伝授。さらに、ヒートマップやGoogleアナリティクスを用いた施策の振り返り会も定期的に実施し、「施策を打つ→結果を分析→改善案を出す」というPDCAのサイクルを現場に根付かせました。

また、メルマガの配信作業、コンテンツ更新フロー、効果測定の報告テンプレートなど、属人化しやすい業務を明文化し、仕組みとして運用できるマニュアルも整備しました。これにより、担当者が異動しても継続的に運用できる体制が整い、外部支援の終了後も自走できる体制が実現しました。


結果と成果

こうした施策を一貫して実施した結果、大学ホームページの月間訪問者数は 3,000件から7,000件へと大幅に増加。さらに、問い合わせ件数は 約1.5倍に増加 し、研究協力やイベント申し込みといった具体的なアクション数の向上にもつながりました。

また、内部体制の仕組み化によって、今後も継続的な改善と情報発信が可能となり、単なる“リニューアル”では終わらない、持続可能なウェブマーケティング基盤を築くことができました。


まとめ

大学Webサイトは、もはや「案内板」にとどまらず、「共創の起点」としての役割を果たす必要があります。今回の支援では、コンテンツの質と量の両面からの強化、行動分析に基づく導線設計、継続運用可能な体制構築という3つの観点を意識したことで、大学の魅力を外部に伝える力が大幅に向上しました。

この成功事例は、他の大学や教育機関にとっても参考になる点が多くあるはずです。持続可能な情報発信と成果につながるマーケティング体制を築くための一歩として、今回の取り組みは大きな意味を持つものとなりました。